『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)公開時、常々自分の〈教養不足〉を痛感していたわたしは、「これは長年の大ヒットシリーズ物であるからして、一般教養映画に違いない。観なければ!」と義務感に突き動かされ、劇場へ足を運ぶ前に予習をすることにした。
前提知識として、トム・クルーズがスパイとして、遂行不可能なミッションに挑む映画であることや、「ちゃららー、ちゃららー、ちゃららーちゃらっ」というテーマ曲も知っていた。
とはいえ、キャラクターの名前もわからないし、続きものだった場合、映画館のスクリーンを前にして、ちんぷんかんぷんになってしまうかもしれない。それでは、きっと楽しめない。
というわけで、一作目『ミッション:インポッシブル』(1996)から観てみることにした。
視聴してしばらくすると、ものすごく既視感があることに気がついた。あれ? わたしこれ、知ってる……。
そう。いつのことかは思い出せないが、筆者はちゃんと『ミッション:インポッシブル』を観ていたのだ。
しかし、特段ミッションがインポッシブルと感じる部分がなく、びっくりするようなガジェットや、街を壊滅させるような爆発爆破大爆発のような派手な戦闘もなく、最後まで地味だったせいか、詳細な内容とともに、観たこと自体を忘れていたのだった。
気を取り直して二作目『M:I-2』(2000)も観た。お、飛行機に乗って……あっ、そうだ、そいつが……! これも観ていた。しかし、神が宿っているはずの細部は思い出せない。
自分の記憶力のなさに、自信と生きる気力をなくしながら、三作目『M:i:III』(2006)を観る。女泥棒と浴槽でアレコレしたあとの、カーチェイス・シーンはしっかり覚えている。が、これって、『ミッション:インポッシブル』シリーズだったのか。別の映画かと思っていた……。
といった具合で、『ミッション:インポッシブル』シリーズは、全く観た記憶がないのに、だいたい観ていたのだった。皆さんはどうでしょうか? 記憶、ありますか?
や、同シリーズは決して面白くないわけではない。むしろ、観たことがあるにも関わらず、飽きずに旧作品を一気観できるくらい、面白いのだ。しかし。しかしだ。
「インポッシブル感が足りない」
ミッション・インポッシブルと言うからには、無理無茶無駄なミッションをハチャメチャな設定でド派手に切り抜けてほしかった! しかし、同シリーズは実に健康的で真面目なスパイ映画なのだった。
もちろん、構造的な問題もある。この映画、そもそもが【インポッシブル】を【ポッシブル】にする物語なわけで、観終わってみれば、すでに「ミッションはポッシブル」なのである。よって、インポッシブル感が印象に残らないという点は否めないのだ。
ああ。もっと、もっとインポッシブル感がほしい! わたしはインポッシブルに飢えているのだ。
あるいは。もしかすると、ハリウッドには『M.I.B』シリーズや『キングスマン』シリーズのような、キワキワなスパイ映画が多いせいで、『ミッション:インポッシブル』シリーズのインポッシブル感が薄れて見えるのかもしれない。
素人が総合芸術である映画の出来を比べるのはおこがましい。それに、巨額の制作費が投じられ、関わる人や会社も多いクリエイティブである。そういったものに、どちらがどう、と言うのも野暮かもしれない。
しかし、いつか『ミッション:インポッシブル』シリーズ、インポッシブル・ミッション・ランキングなどを作ってみたいと思うのだった。